Dr.タナカの豆知識

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Dr.タナカの豆知識


入れ歯の改造

「先生、ヤラカしてしもうた。診に来てくださいや!」
往診先の○原さん(仮名・80代のオジさん)から診療所に電話が入りました。 大阪に戻る前の勤務医時代の出来事です。
「調子よう使こうとったんじゃが、チョビっとだけ調整したら、それから痛とうて痛とうて・・・ (田中に)叱られるか思うて、ずっと我慢しとったんじゃけど、いよいよ咬めれんようになって・・・」
どうやら自分で入れ歯の修理をして失敗したようです。電話口の向こうで、恐縮しきりの○原さん。
どんなことになっているのか、まずは、見てみないとわからないのでお家に伺いました。
○原さんが、入れ歯を差し出してくれました。 下の総入れ歯の裏面の一部が焦げてます。凸凹が入ったざらざら面。まるでモダンな外壁のようです。 台所のコンロで炙ったことはすぐにわかりました。
頭を掻きながら○原さん、 「いやあ、こしらえてもろうてから、調子よう使うとったんじゃけど、欲が出ましてな。 入れ歯の裏を温めてやわらかくしてから、ギュッと咬めば、もっとピタッとなるんじゃないか思うて 台所のコンロを使うたんじゃが、あっという間に裏が凸凹になったこりゃイカンと水道水につけたんじゃけど・・・」
・・・・・・・・・
発想はユニークなのですが、残念ながら入れ歯はコンロで温めても柔らかくはなりません。 凸凹の外壁、さぞ痛かったかと思います。 ガラス細工のイメージで「調整」しようとした○原さん、痛みを一週間我慢していたそうです。
結局、○原さんの焦げた入れ歯は、 変形した部分を剥ぎ取って、裏打ちを全部張り替えることで、再び使えるようになりました。
無理に口に入れて、やけどしなくてよかったです。

田中歯科クリニック  田中 隆博

(大阪市福島区吉野4丁目25-23)